kobeniの日記

仕事・育児・目に見えない大切なものなどについて考えています。

あんこが食べられない

あんこが食べられない。物心ついた頃から、食べられない。他には好き嫌いは特にないのだけど、あんこだけダメだ。正確にいうと、食べられるんだけど、特段美味しいと思わない。「甘い」以外に何も感じない。だから、アンまんとか、たいやきといった類の物は、これまでほとんど食べたことがない。羊羹に至っては、おそらく生まれてから一度も口にしたことがないように思う。「ぼたもち」なんて、それが何なのか、どういう形状かすらわからない。そんなものが棚から落ちてきても迷惑だ。「それは美味しいあんこを食べたことがないからだよ」と言われたことがあるけれど、確かにそうかもしれません。けれど、そんなに好きでもないものの味をあえて探求する気も起きず、よって「匠の手による絶品のあんこ」みたいなものを食べる機会もなく、苦手なまま今現在に至っている。

だからたとえば、会社でまわってきたおみやげが「もみじまんじゅう」だったりすると、ちょっとガッカリする。どっちかというと「マカダミアンナッツ」とか、「ご当地プリッツ」がまわってくる方が嬉しい。しかし、おみやげというものは、あんこを含んだ和菓子の確率がかなり高い。私の感覚値だと、6割あんこ含んだ和菓子、2割せんべいなどの乾きもの、2割洋菓子(チョコ、パウンドケーキなど)という感じがするんだけど。生八つ橋とか、たいやきだったらまだいい。これが、おはぎ(外にべったりあんこが塗ってある系)とか、赤福だと、けっこう悲惨である。だって、本体のほとんどの部分があんこではないか。あいつらコンセプトはあんこだろう。ふつう中に隠しているものをあえて外に出してきてるんだから。それを、外側をはがして中だけ食べるというのは、彼らの存在意義を無視しているようで、さすがの私にもできない。だから、そういうものがまわってきた時は小声で「ごめん、あんこ食べられないから」と言いながら、スルーさせてもらうしかない。


自分があんこ嫌いなことを思い出すのは、おみやげがまわってきた時くらいで、ふだんは基本的に忘れている。私の家族は、私が和菓子全般(あんこ起因で)苦手なことを知っているので、そういったものを買ってこない。チョコレートが好きなので、自分で甘い物を買う時は、チョコ系を買う。そもそも、あんこ以外にもお菓子はたくさんあるので、そんなに困らないのです。
しかし、ごくたまに、「私は人生においてかなり大きな喪失を抱えているのではないか」と考えこんでしまう時がある。たとえば、他の人の、あんこに対する異常な喜びようを見た時(すごく美味しいたいやき屋さんを見つけた、という話で盛り上がっているとか)。どうも他の人にとって、あんこはチョコレートに匹敵するくらいの存在感の大きさであるようだ。なんていうのか、スイーツの二大巨頭?っていえばいいのか、チョコとあんこは(どっちも「こ」がつく三文字だし。WinとMacみたいなもんか)。確かに冷静に考えると、あんこのせいで私が「美味しさ未体験」に終わっている甘味は非常にたくさんある。ここまでに挙げてきた、あんまん・たいやき・羊羹・おはぎ・各種まんじゅう系の他にも、(あんこが乗った)団子・あんみつ・最中・柏餅・どら焼き・小倉トースト・あずきバー*1エトセトラ、エトセトラ…もうホントに和菓子職人と井村屋社員の皆さんには申し訳ないのだが、ほとんど食べません!食べたことありません。すみません。
そういえばアンパンマンの主役も「アンパン」ではないか。日本人にとって、パンの代表=アンパンなのか。その次が「食パン」と「カレーパン」というのも、なんだか偏っているというか、単にやなせたかし先生の好きな順なのでは…?という気がしないでもないが、なんだかこう考えていると、自分が日本人、いや人間失格のような気すらしてくる。すみません。あんこ食べられなくてすみません。


とはいえ、やっぱり、普段は忘れているんです。あんこを食べられないことなど。生きていくのにそこまで困りません。ただ、その事実をじっと見つめようとすると、「もしかして、あんこが食べられるってすごく羨ましいことなのかも?」という風にも思えてくるというだけで。でも、それをじっと見つめたところで、私のあんこ嫌いはたぶん治らないし、そんなことしてるヒマがあったら、ピエールマルコリーニのチョコケーキが食べたい。秋だし美味しいモンブランが食べたい。世の中には、あんこの代替となる幸福をもたらすごちそう、その他楽しいことはたくさんあるのです。



「最初から失っているもの」については、人は特段、喪失感など抱かないのかもしれない。もちろん、程度にもよるとは思うけれど。「あんこ」は程度でいうと喪失レベル0.5(10段階ぐらいで…)ぐらいでしょうから。ちなみに私はひとりっこで、「ひとりっこって、さみしいでしょ?」とよく聞かれるのですが、実はあんまりそうは思わない。たとえば私に元々お兄ちゃんがいて、ある日、お兄ちゃんがどっかへ行ってしまった。そうしたら私もすごくさみしいと思う。けど、最初からいなければいないで、それが当たり前として生きていく。この「さみしいでしょ?って言われるけど、最初から(兄弟が)いないから、そうでもない」という気持は、よくひとりっこメイト(?)から聞いてきたので、私だけの感情ではないと思います。
だからさ、たとえば自分の子供に、すべての物事を完璧に与えてやれなくても、そこまで思い詰める必要はないのかもしれませんよ。それが当たり前だと思って、案外たくましく生きていくのかもね。かなり強引なまとめだけど。



ここまであんこをdisってきていまさら何なのですが、実は私、ぜんざいだけは食べられます。どう見ても「9割あんこ、コンセプトあんこ」なのにね。どうなってんだろう私の味覚。もし「匠の手による絶品のぜんざい」を下さるという方がいたら、ぜひ。




※この文章は、インタビューズで「『食べる事』に何か思い入れはありますか?」という質問を頂いて、それに答えるつもりで書いてみました。ステキな質問ありがとう!私の好きなスイーツはチョコケーキとマシマロとチーズ鱈です。赤飯は食べられませんので私を祝ってくれる時はドリアでお願いします。

*1:井村屋のHPを見たら、毎月1日はあずきの日って書いてあった…マジか…