kobeniの日記

仕事・育児・目に見えない大切なものなどについて考えています。

蜷川実花さん責任編集の「働くママ」本、セキララで良かったので紹介するよ

前回、オンライン献立共有について書くと言っておきながら、ちょっと紹介したい本を見つけたのでサラリとUPします。いま発売中だから、早く紹介しないと本屋さんから撤収されちゃうかなと思って。ステマじゃありません。急いでいるのでドライブ感ある感じで(とちゅう何度も0歳児に執筆中断されながらですが)書きます。

 

MAMA MARIA(ママ・マリア) (光文社女性ブックス VOL. 145)

MAMA MARIA(ママ・マリア) (光文社女性ブックス VOL. 145)

 

 


表紙にでっかく「働くママへ!」って書いてあったので、本屋さんで思わず手に取りました。「ママ・マリア(MAMA MARIA)」っていうMOOKです。蜷川実花さんが編集長、ファッションフォトなど全部撮影だそうです。
最初見た時は、ママ向けグラビアや子連れスポットがたくさん載っていて、ママであることをめいっぱい楽しむ!みたいな本なのかと思いました。けれどパラパラめくったら、佐田真由美さんがスタイリッシュにポーズを撮っている写真の上に

 

「産休中は外の世界と遮断されちゃった。いいね、みんな働いてて…かなり卑屈になっていたかも」

 

って書いてあった。えっ。あんまり見ないよな、こんな女性誌っぽいモードな写真の上に「産後は卑屈に」っていう見出し…と思ったんですよね。なんだろうこの本?それで前書きを見ると、蜷川さんからのメッセージとして

 

「はっきり言って、どんなキラキラして見える人も悩んでます、素敵ママ代表のあの人もこの人もみんな悩んでます、みんなボロボロです、もちろん私も。このことをキチンと伝えたくて」

 


と書いてありました。
購入して読み進めていくうちに「これって、ふだん女性誌でキラキラしている有名人ママが、大変なことや辛いことまで含めてセキララに語る、っていうコンセプトの本なのか!」と分かってきました。だからMOOKの体裁ではあるけれど、基本的には「インタビュー集」なのですね。モデルや女優、デザイナーやクリエイター等としてキラキラと働くママの「ボロボロ部分」、白鳥が湖の下で足掻いてる、そのバタバタした足の部分まで語ろう!というものなんだなと。


なんとなく本の雰囲気がわかるように、いくつかインタビューから抜粋しますね。

 


益若つばさ
「結婚当時は、家をきれいに片付けられないと自己嫌悪に陥ったり、主人に申し訳なく思って、夜中に歯ブラシでめっちゃ掃除しはじめたり。でもいまは『疲れちゃったから、明日でいっか』ってだいぶ思えるようになった」


東村アキコ
「子育ては先が読めないしこっちの思う通りにはいかないわけですから、もうあの頃はホントに辛かった 思い出したくない 人生で一番辛かった」


吉川ひなの
「子供にご飯をあげたあとの床とか、地獄のようにぐちゃぐちゃ」


土屋アンナ
「再婚してから、旦那が家で子供を見てくれるぶん食事は作る。男だけだと食べたいラーメンやカレーのみで終わっちゃうでしょ。そこにサラダも添えたいっていう部分はこっちがケアしないとね」


蜷川実花
「私も離婚したらすごく楽になった。『私が働かないと生活できない』という明確な理由ができたから。夫婦で働いてると、『子供が泣いてるのに、なんで働かなきゃいけないんだろう』って、自分を責めてしまいそう」


川上未映子
「その人の根性とかバイタリティの問題ではなく、一日24時間しかないわけだから、絶対に(両立は)無理。本当の意味での『両立』はありえない」
「子供を持たなかった人生もあるっていうことは忘れちゃいけないって思う」
「健診とかに行くと、ちょっと小さいんじゃないかとか、母乳が足りてなかったのかなとかって気になるんです。(略)そんな自分にがっかりですよ」


小林加奈(Velnicaデザイナー)
「『完母』っていう母乳神話にすごく苦しめられた」
LiLy
「初めて(子供を)保育園に預けたとき、先生にね、うんちの柔らかさを聞かれて、その瞬間、泣きそうになったの。それまで夫も家族も一緒にいたけど、それでも息子のうんちの柔らかさについて私に聞いてくれた人はひとりもいなかった」

 

大変だよ悩んでるよ!というものの他にも、「人それぞれ、いろいろなスタイルで両立やっていこうよ」みたいなことが感じられるエピソードもあり。


田中杏子(NumeroTokyo編集長)
「うちは別居婚スタイルで、彼は同じ敷地の別棟で生活しているんです」


小島慶子
「私と夫は完全に入れ替え可能な夫婦。お互い家事はひと通りできるので、分担というより、2人で回している感じです。(略)役割が固定化すると我慢大会になるので、臨機応変にすれば家の中が平和です。」


植田みずき(ENFOLDクリエイティブディレクター)
「(ハウスキーパーを頼むのには)確かに若干の罪悪感はあります。でも仕事から帰ってきて家が綺麗になっていると嬉しいし、それができなくてイライラするほうが家族にとってもマイナスだから」


杉谷恵美(シンシア・ガーデン代表)
「株主総会の日に子供が病気になっちゃって、会議室にベビーベッドを置いて株主総会をしたんですよ」

 

■ イヤイヤ期の前ではどんなママも怖いくらい平等なんだな

出てくるママたちは基本的に乳児〜幼児を育てているところのようで、大変さもひとしお。ああ、今まさに私と同じようなことで悩んでるんだ!って思うエピソードがたくさんありました。
考えてみれば当たり前のことで、いくら彼女たちがキラキラした職業に就いているといっても、あくまで我々は同じ国に住んで、同じくらいの年齢の子供に向き合ってるんですよね。夜泣きがない、イヤイヤ期がない子供などいないのだし、それぞれの母と子の関係は代替が効かない、唯一無二であることも同じ。もちろん「有名人なんだから、お金で解決できるのでは?」と思うところもあります。それはそうなんだけど、じゃあ子育ての、何をどこまでお金で解決するのか?できるのか。少なくとも「母乳が出ない」という悩みは、そう簡単にお金では解決できないよね、とか。それにいくらお金があっても、「自分でやるのか他人に任せるのか」の線引きは、切実についてまわると思います。

ハイパーワーキングマザー伝説!とでも言えるような記事を雑誌で目にした時に、どっと押し寄せる疲れは、「私は同じ働くママなのに、それ特有の悩みや辛さをこの(雑誌に出ている)人と共有できてない。せっかくメディアに出ているのに、私の気持ちを代弁してはくれないんだな」という寂しさやガッカリ感が原因だと思います。そういう記事に比べると、この本は一見キラキラしているママたちが、私と同じように、周囲や自分自身の子育て・ジェンダー観(そこから来る無理解)に振り回されて葛藤したり、子供ができたことで、仕事のスタイルについても変化を余儀なくされ、試行錯誤しているらしい様子が伝わってきます。「夜明け前に起床し2時間PCに向かい子供たちは義父母に預けそのままNYへ」みたいなハイパーな部分も…無い…わけではない。湖の下での足の掻きっぷりはハンパないと思う。それでも、むやみに涼しい顔されるよりはいいよな!と思いました。

■「イクメン」については全然出てこないが蜷川父がぜんぶ持っていく

読み終わって思ったことですが、全体的に夫の影が薄い。超薄い。「離婚してスッキリした」という人が何人も出てくるw 確かに彼女たち自身がすごく華やかな存在なので、夫もそれ同等に有名人だったりして、だからこそ多忙を極めていて、子育てできないという可能性は高い。けれどこれだけ、妻の方が仕事で個としてキラキラ輝きまくってんだから、夫が全面的に子育てして支えてる夫婦が居たっていいのに。と思ったんですよね。そしたら本の真ん中あたりで出てくる蜷川父が、イクメン枠を全部持っていってくれた。

実花さんは、まだ蜷川幸雄さんが売れる前に生まれた子ということで、奥さんが女優として働いて幸雄さんが「ハウスハズバンドとして」彼女を育てたのだそうです。イクメンの走りですよね。

「家事というのは本当に大変です。(略)だから、世の中のお父さんたちに言いたいです。生活の中でちゃんと役に立ってないとダメだぞと。(略)やりっぱなし、食べっぱなしはダメだぞと。後片付けをすることが大事」
「(女は)精神的にも経済的にも自立しろ。ダメな男は捨てればいい」
「格好いい女というのは、テキパキした女のことです。そして、受け身ではないということです」

カッコE!惚れる!そんな蜷川父ですが、本誌にはお孫さんとのほのぼの2ショットもあり、ほっこりさせられました。

 

 

…ということで、本の趣旨がしっかりしているせいか、女性誌によくある感じのインタビューではなく、妙に突っ込んだ内容になっていて面白かったです。母乳神話、育児ノイローゼ、産後うつなどの単語もよく出てきます。宗美玄さんの産後アドバイスも。もちろんインタビューだけじゃなく、オサレ靴や授乳服なども載ってました。個人的には「サラダを添える土屋アンナさん」が良かった。私も頑張って添えていきたい。よかったら、皆さんも読んでみてください。普段なかなか見られない、白鳥ママたちの水面下が見られますよ!というかこのレビュー、サラリとって書いておいて長かったね…!



※参考 「個としての輝き」

Web女子に「個としての輝き」を!久谷女子が面白い(Excite Bit コネタ) - エキサイトニュース